この年、齢63を期して山登りを再開した。
結構意欲的に登ったと思う。
結構意欲的に登ったと思う。
夏には福井の百名山荒島岳(初)、その翌日に立山(20数年ぶり)、さらに後立山(初)、9月に入って富士山(20数年ぶり)、そして秋口の中アの南駒ヶ岳(初)。
今から思えばこの年、東日本大震災と未曾有の大津波、福島第一原発の炉心溶融、爆発...
かつてない規模の犠牲者、被害者、避難民を生んで、暗澹とした不安が社会を覆っていく中で、老いゆく無力な我が身の足掻きにも似た衝動が湧き起こってきたのかもしれない。
かつてない規模の犠牲者、被害者、避難民を生んで、暗澹とした不安が社会を覆っていく中で、老いゆく無力な我が身の足掻きにも似た衝動が湧き起こってきたのかもしれない。
一人で深い山入り、誰とも会うことなくひたすら歩くだけで、少しは心が癒されてくるようでもあった。
9年前のこととて、だいぶ記憶も薄れているが、南駒ヶ岳の記録をここに残したいと思う。
似たような写真も多いが、省かずにできるだけそのまま載せよう。
全てが自分の記録として大切なものだ。
写真の時間はカメラの記録によるもので正確ではないが記しておく。
伊奈川ダム上の登山口駐車場は、国土地理院の地図の等高線では1080m前後。
標高2841mの南駒ヶ岳頂上まで標高差1760mということになる。5:50
駐車場からすぐ今朝沢橋を渡れば、越百、南駒登山口と空木岳との分岐点
越百山登山口のある福栃橋をやり過ごし...7:00
今朝沢の登山口が4合目標高1450m
ここから本格的な登山が始まる。
秋の森林帯は涼しい
御嶽山
朝の樹林帯は清々しい。
9:40
出発から約4時間、もう1300m以上登った!
結構頑張っている。
越百山2614m方面、ピークはあの向こうかな...御嶽山3067mと乗鞍岳3027m
御嶽山
乗鞍岳3027mと笠ヶ岳2898m
穂高連峰
御嶽山、空気が澄んできた。
南駒ヶ岳2841m
仙涯嶺2734m
越百山2614m、ピークも見えているようだ。南駒ヶ岳の登山道に入って初めて会った人。
暗いうちから登り出していたのだろうか...
紅い実
乗鞍岳。
手前は三沢岳から派生する尾根上の蕎麦粒岳で、興味深いスカイラインは私の岳友が初トレースしたパイオニアマインドルートだろう。
私はあの下の萩原沢が数少ない中央アルプスの活動履歴。
遠くに穂高連峰、手前は三ノ沢岳木曽川下流域を見下ろす
登路を振り返って感慨無量
11:26
南駒ヶ岳頂上手前
ここから頂上までが意外に手間取った。
9月末はまだ紅葉には少し早い。
頂上がだいぶ近づいてくるこの辺りは大まかな岩の道手前の鞍部に赤い屋根の越百小屋がチラリ見える。
11:50
頂上到着。
駐車場から約6時間
越百山方面の中央アルプス南部の主稜線
塩見岳の向こうに富士山。
今ならわかるが、当時は南アルプスの山の名前は全く知らなかった。
甲斐駒ヶ岳と千丈岳北岳、間ノ岳、農鳥岳の白根三山
空木岳と中央アルプス北部
11:51
小さな祠
よくぞ標高差1700mを登ったものだ。
一番向こうが恵那山2191mくらいか木曽殿乗越2490mから東川岳2671m、熊沢岳2778m、その向こうが主稜線を外れている三ノ沢岳2847m
主稜線からの比高が小さいので平板に見えてしまう。
それでも高所の魅力は大きい。
名前は知らない。この人は絵を書く人らしい。
とても印象に残ったので覚え書きとしてここに残しておこう。
少しくらいは記憶違いがあるかもだが....
冬の間は東京で日雇いで暮らし、お金を貯めて、夏になると山を徘徊していると言う。
毎年、松本市のある公園にテントを張ってそこを根城にしているとか。
近くの交番の人とも顔馴染みと言うから凄い。
その間、何十日も山を歩くので1シーズンで山靴がダメになるそうだ。
今回は南駒ヶ岳から大平峠まで歩けたら歩きたい。
ひどい藪漕ぎもあるだろうなあ。
ロマンチストである。
前日は(中央線の)須原駅から伊奈川ダムまで歩いて行こうとしてたら、工事の生コン車が拾ってくれた。
今日は摺鉢避難小屋に泊まる。明日から南に下るとのことだった。
スケッチブックを見せてくれた。
9月15日徳沢と横尾の間で前穂高!なかなかの力作だ!
松本市からの行程もきちんと記録されている。
尊敬すべきお方であった。
9年前の事だが...今も元気でいらっしゃるだろうか...
ロマンチックおじさんと話し込んでたら頂上滞在が1時間...
急いで下って今日中に帰ろうと思ってたことがバカバカしくなり、越百小屋に泊ろうかなあと思い始めていた...
洗脳されたみたいだ...
急いで下って今日中に帰ろうと思ってたことがバカバカしくなり、越百小屋に泊ろうかなあと思い始めていた...
洗脳されたみたいだ...
12:55
摺鉢窪避難小屋は南駒ヶ岳の東側の真下、摺鉢窪と言うカール(氷河圏谷)の末端に建てられている。
あたりは百間ナギと言われる崩壊地で、いずれこの小屋も崩壊に巻き込まれそうだ。
写真の断裂壁の源頭から百間ナギは始まっていて、この辺りを百間ナギ冠頭部と呼ばれているらしいが、この巨大な壁の名前は、調べても見つからなかった。
断裂壁には幾重にも重なった荒々しい地層があった。
太古の地球が大暴れしたドラマの名残だ。
ロマンチックおじさんの今夜の宿はあそこだ。
ロマンチックおじさんと別れ、仙涯嶺2734mの岩場に向かう。南駒の頂上を振り返る。
南駒ヶ岳の頂上付近を振り返る。
13:22
仙涯嶺2734m
13:41
ボルダリングに良さそうな岩だが...
仙涯嶺は花崗岩の岩が露出した岩山でコースが分かりづらい所もある。
岩フェチなのであちこち写真を撮りに動いたら2度ばかり道を見失った。
13:43
柱状岩塔も興味深い。
岩塔の上に乗っ下ている石もどのようにあの上に残ったのか不思議である。
13:49
南アルプスの向こうに富士山。
類似写真だが載せておこう。
相変わらず塩見岳の右に富士山がチラリ。
今ならわかるが9年前は南アルプスにも足を踏み入れたこともなく山名を特定できなかった。
そして今歩いてる中央アルプスもほとんど初体験に近い。
だから初めて見る風景に気持ちが高ぶり、嬉しくて仕方がない。
13:56
越百山へのなだらかな道
縦走はいつも絶景と道連れ
14:04
南駒ヶ岳
14:17
越百への道
南駒ヶ岳
14:36
越百に近づいた
富士山、南アルプス
14:56
頂上は目の前
頂上は目の前
見納め
14:58モヤのような雲海上に御岳と乗鞍。
越百小屋を見下ろす。
今から車まで下っても完全に暗くなる前には到着できそうだ。
しかし...
鮮やかな紅葉が目を引く。
山全体としてはまだまだ紅葉の時期には少し早い。
15:30頃
小屋到着
宿の主人に一泊を頼んだ。
主...予約入れてくりゃ良かったのに...
私...スミマセン、電話がつながらなかったんです(ウソ)...
主...まだ十分下れるよ、下りなよ...
私...南駒ヶ岳登る間、ずっとこの小屋が見えてて、急に泊まりたくなっちゃったんです(半分ホント)
主...まだ十分下れるよ、下りなよ...
私...南駒ヶ岳登る間、ずっとこの小屋が見えてて、急に泊まりたくなっちゃったんです(半分ホント)
主...悪いけど食料が無くてさ晩飯できないよ...
私...大丈夫です。行動食がまだ十分あります...
私...大丈夫です。行動食がまだ十分あります...
主...あ、そう、じゃトイレとか確認してきて...そこから外に出て外灯に沿って行けばあるから...
今夜の客は私一人のようだ。
ついでに小屋の周りを盗撮越百山頂上付近
まだ陽は十分当たっている。
奈落のような所
そうこうしているうちに陽は傾いてきた。
主人から声がかかった。
...じゃ、餅でも焼いて食べようか...
熱さをこらえてプクリと膨らんだ餅を口にすると、ほんのりとしたコメのうす甘い味がとても懐かしく
どんなご馳走よりも美味しく感じられた。
主人は餅をひっくり返しながら、残照に映える南駒ヶ岳をつくづくと眺め
...いい山だねぇ...
ポツリと一言。
何か熱いものがグッと私の胸に湧き上がってきた。
早々と寝室に引き下がり、小屋の羽毛のシュラフにくるまった。
心地よい疲れであっという間に寝落ちした。
夜半、雨の音で目が覚めたが、多分雨が降ってなくても目が覚めただろう。
まだ暗いうちに起きてゆっくりと雨具をつけシュラフを軽く畳んだ。
そして前夜主人に話しておいた通り、声をかけないで小屋を出た。
6時前後だっただろうか...
正確な時間はわからない
降りしきる雨の中を歩くの久しぶりだ。
あとは下りるだけという解放感でウエルカムである。
そういえば、摺鉢窪避難小屋で止まっているはずのロマンチックおじさんはこの雨の中でも出発しただろうか...それとも沈殿を決め込んでまだうたた寝しているだろうか...
樹林帯はとてもファンタスティック最高!
私の帽子
7:30
5合目あたりだろうか、だんだん雨も小降りになってきた。
下界が近くなり雨もほとんど上がっている。
8:10
福栃橋まで戻った。
綺麗なせせらぎを眺めたりして林道を下るのみ
8:48
駐車場まではもう少し。
越百小屋からの下りは3時間前後だった。
2年後にまたここを訪れることになる。
越百小屋の主人にこの日のことを話したらほとんど記憶に無いらしかった。
その時の記録は
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