往年の同人の残党3人。
いつもの顔ぶれだ。
全員生き永らえて古希である。
ここ何年は中央稜に通っている。
われわれの体力で、3000級の山での岩登りできそうなところはここしかないから...
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宝剣岳東面(2014.11月撮影)
目指すは中央の岩溝の右手、頂上に直接突き上げる岩稜だ。
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2015.5.23撮影

これに先立って、親分はこの右手のガリーを毎年春先にスキーで滑降している。
その都度私に写真を送ってくれる。
今年も!
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今年はなんと御子息と!
逞しそうな息子じゃないか!
ウチの青二才なヤサ男どもとは大違い(笑)
ここは木曽駒の頂上だね!
向こうに宝剣が見える!
そしてさらに向こうには空木岳だ!
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滑り出す直前の写真のようだ。
御嶽に通っていたが2014年の噴火で行けなくなり、以来毎年ここに通っているとのこと。
かなりの急傾斜だ!
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てなわけで、今年も2年ぶりに親分のスバルに便乗して菅の台駐車場に滑り込んだ...
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岳友Nら某同人の残党3人。
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予報はずっと前からはっきりしなかったが、この日に近ずくにつれ好転。
少なくとも今日明日は雨の心配はなさそうだ。
写真には身をかわしながら飛ぶツバメが数羽写っている。
ここまでツバメは上がってくるのか...
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やや薄曇りながら、見通しは良い。
南アルプスの北部が綺麗に見えている。
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甲斐駒ケ岳をズーム。
私たちは今日5月18日の千畳敷ホテルの宿泊を予約をした。
⑴もし今日登れて、ロープウェイの時間に間に合わなかったら.....。
⑵今日が悪天候で明日の好天が見込めれば、明日は早朝にホテルを出て取り付けば帰りのロープウェイには間に合うだろう...。
の2面作戦だ。
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もちろん、昔はここでの宿泊など考えもしなかったし、仮にそんな事態になったとしてもビバークしてただろう。
何よりももっと速かった(笑)
昔、私も参加していた別のグループの仲間は、真冬に宝剣の中央稜を登った。
立ったままビバークしたという。大変だったろうなあ...

今は齢を重ね体力も衰えた。
雪の装備もあるが、今年はとにかく頂上を踏んで一般道を降りよう...
懸垂下降はしない、取り付きにデポの荷物は残さない。
そんなコンセプトである。
何かが起きればロープウェイに乗り遅れる可能性もある。
ということで千畳敷ホテルに予約を取ったのだ。
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サギダルの尾根かな、冬には人気がある雪稜のようだ。
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今年は遅い積雪があり雪の状態が悪いのでスキー場のリフトは設置されていない。

しかし今日の俺は天才バカボンだ!
雪だというのにアイゼン忘れて、サングラス忘れて、おまけに手袋も忘れてる。
朝4時前に家を出て、高速に入ってからアイゼンを忘れたことに気がついた。
この時間、親分の家に向かっているであろう岳友Nに連絡をして、親分とこでアイゼンを見つくろってと頼んだが...
私の靴に合うものではなかった...
2年前、このメンバーでここに来た時もアイゼン忘れたな。
以前、春の八方尾根でも...
サングラスは千畳敷ホテルで¥1,500で買った。
真冬じゃないし手袋無くても我慢できないことはないだろう...
ま、今日もザイルはあるし、気心知れたメンバーと一緒だから気持ちはそんなに落ち込まない。
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親分、
LOWAの厳冬期用ブーツ。
アルピニストフアッションから自由なカジュアルでオサレなイデタチ。
昔からそんな伊達男ぶり。
オレもそうだが...
アルマーニーと、ワークマンとかユニクロぐらいの差があるナ(笑)
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千畳敷を取り囲む斜面にはあちこちにスキーやボードのシュプールがある。
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取り付きでスマホ
ヘルメットはないのと聞いたら、あれ、嫌い...だとさ!
ま、束縛を嫌う自由人、自己責任で...
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Nも続いてやってくる。
足跡はわれわれのもの、目新しい足跡はなかった。
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ここからバンドを少し左上し取り付きとする。
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南アルプス北部の連なりと駒ヶ根市
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伊那前岳方面。前岳は右のほうだが、あの稜線の最高点は2911m。
ちなみに宝剣岳は2931m、木曽駒ケ岳は2956m、木曽駒と宝剣の間の中岳は2925mとなっている。
3000mに手がとどくところだ!
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いつもトップを務めるNはこんな重い荷物担いで登れないと辞退。
親分がトップを務めることになった。
親分は登攀用のシューズに履き替えた。
冬山用のブーツは私のザックに納めた。
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始動開始!
自分で言うのもなんだが、なかなかいい写真じゃないか!
ここは撮影の絶好のポイントだ。
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同じ場所で、2015.5.23の岳友N。
自分で言うのもなんだが、やっぱりいい写真だ!
カタログから抜け出してきたようなイマドキなフアッションじゃ無いところが、また好いね!
オッサン世代!!??の面目躍如だわ!
因みに俺はユニクロの擦り切れたカーディガンを羽織っている(笑)
自由って、こういうところに感じるね!
昔の読んだ記事によれば、アメリカの El Capitanを登るときは大型のラジカセを持ち上げて、ハードロックをガンガン鳴らしてたっていうからねぇ。
そんなアメリカ人を俺はアホかと思ってたが....
ちなみに雪の量は年によって違う。
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流石にボルダリングに通って腕を上げている親分、淀みなく登る。
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しかしトップとフォロー、怒鳴りあうだけの意思疎通はうまくいかない。
やはり昔のようにホイッスルが良い。

昔、岳師O氏の教えでホイッスルを使い始めた。
リードするトップを下で確保する者は、ザイル残りが10mを切ったらホイッスルを一回鳴らす。
残り5mを切ったところでもう1回鳴らす。
トップはこの2回のホイッスルを聞いたところで適当な確保点を探す。あるいは構築する。
そして自己確保を取ったら最初のホイッスルを鳴らす。そして後続の確保体制が整ったら2度目の登れの合図のホイッスルを鳴らす。
下で確保しているものは上からの最初のホイッスルを聞いたらトップの確保を外す。そして登る準備をする。2度目のホイッスルを聞いたら自分の確保を外して登りだす。
この一連の流れを基本に合図を決めておけば声枯らして怒鳴りあうこともない。
人間の声よりはるかに通ずる、聞こえる。
ザイルを張って欲しい時は、ピピーとかバリエーションも決めておけばいい。
最後に岳師O氏は、ホイッスルを首にかけるそのヒモに、小さなナイフをつけておけと付け加えた。
万が一、最悪の事故で動きが取れなくなった時は、パートナーとつながっているザイルを切るためだと!
それを知らなかったわけではないが、その言葉を聞いた時は流石に戦慄した。
幸いそんな状況は免れてきたが...

中央稜では常にトップの姿は岩の向こうに隠れて見えなくなる。
そのため意思疎通がままならず、酸素の薄いところで怒鳴り合うことになり、少なからぬ消耗を強いられた。
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岳友Nと私は登山靴で登るが....
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これが登りにくいことこの上ない。
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この中央稜の岩はがっちりしている。
ラバーソウルで指がかかればスタンスがなくても摩擦で登っていけるが、登山靴ではそんなわけにはいかない。
それに加えて荷物の負荷がかかるともうほとんどパニックである。
昔は躊躇なくアブミを使っていたかもしれない。
それにこれぐらいの荷物は普通だったはずである。
やはりラバーソウルのシューズに履き替えるべきだったが、私は初めから持ってこなかった。
これは忘れたのではない。
持ってこなかったのである。
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それとザイル捌きがダサくなっている。
登りだすたびにもう一本のザイルをくぐったり跨いだりゴチャゴチャしてしまう。
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ま、そんな状況ではあるが登らなくてはならない。
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3時ごろには千畳敷のカールの底で登ったルートを見上げながら乾杯だなあ〜と踏んでいた私たちだがことはそうは問屋が卸してくれそうにない。
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ガスが出てきて日差しが無くなると体が冷える。
トップを登って、長いこと私達を確保しなければならない親分も、冷えてきたとこぼしていたが...
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まあ、雨は多分降らないだろうからそんなに悲壮感はない。
ガスに巻かれるのも3000mの岩場であることを否応なく感じさせてくれて悪くない。
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たかだか100数十メートルのルートに嫌という程時間をかける私達...
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伊那前岳への稜線近くには上がってきている。
このあたりでホテルには遅れていると電話した。
頂上からまた電話することにした。
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レイバックで強引に突破すると最後の関門オケラクラックだ。
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中央稜から見た至近の景色
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何とか所要時間の倍以上かけてようやく終わりが見えてきた感じだ。
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不様に登る私だが、このメンバーで登っていることが嬉しくて仕方がない。
遅くまで登って、ビバークとか下降とかやってた若い頃が思い出される。
だから時間が遅れても何にも気にならない。
このメンバーだからだろう。
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オケラクラック
前回はラバーソウルで登ったが、なんてことはなかった。
山靴では少し悪くなる。Nのフレンズが回収困難になった。
毒づくN、結局放棄。
次に来た時果たして残っているか?
オケラクラックを抜ければ50mハイマツを漕いで頂上だ。
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ようやく、ほぼ頂上に全員集結。
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嬉しくて笑みがこぼれる!
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親分も嬉しそうだ。
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スノーリッジを渡れば頂上。
このスノーリッジにも至近の足跡はなかった。
ここで頂上に達したことをホテルに連絡した。
ナント17時前だった!
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頂上からの一般道の下降はスリップ事故の多発地帯だ。
ここから滑落すればまず助からない。
頂上直下は雪が無かったがすぐ雪、所々氷が出てくる。
手すりがわりの鎖が設置してあり、所々雪、氷に埋もれているところもある。
大幅に遅れている我々だが、安全を期してザイルを着けたまま下降した。
特に私はアイゼンがないので、ザイルの有り難みが身に沁みる。
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下降中のN
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途中、親分がいつも滑降している斜面を覗いて見たが、滑り出しは50度くらいあるのではないか...
親分、立派!
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それぞれが体に何らかの故障がある。
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遅くなったが、これが古希となった我らの紛れない現住所だ!
カッコつけたって始まらない....
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ホテルのスッタフが私達を心配してライトを点けて待っていてくれた。
とっくに夕食の時間は過ぎている。
遅れたことを詫びると、ご無事で何よりですとねぎらってくれた。
その言葉に思わず涙が出そうになった。
スタッフの皆さんに改めて感謝の意を捧げます!
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いろんな思いを噛み締めて...乾杯!
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とにかく登って生きて帰ってきた!
これが最後になるのかもしれない...
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翌朝は昨日よりさらにいい天気!
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記念撮影
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記念撮影
俺を引っ張り上げてくれた二人に感謝しかない!
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あとは蛇足な写真ばかりだが...
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始発の次のロープウェイで下山
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さあ...また夢探しの旅が始まる...