(以下Sさんのレポート、写真もSさん)

年下ではあるが山登りの師でもあるY兄に全くの久し振りのmailを入れたのは、TVで韓国の食い番組を見たのが事の発端、如何に老い先短い男の食い意地がこの世に恋々と、、、。 
とにかく立派な認知症気味の女房を娘に託して、Y兄とそのご近所さんで韓国語はペラペラ、訪韓も三十数回目というS姉に導かれてソウルの安ホテルに入った。          
空港から鉄道と豪勢にもタクシーでの乗り付けである。

タクシーの中では「この道ちょっと遠回りではないの!?」、「今の大統領はどう?」くらいのジャブと政治談議{言葉は分らないのだがその様な会話らしい}。   
Y兄の全く淀みない韓国語を初めて耳にし、改めてまだ知らなかった兄の文学や山だけに留まらない奥行を垣間見た思いでややショック!
今後のお付合いの作法に迷いが生じてしまい、心の始末がつかぬまま目的の、とは言ってもホテルはするりと着けるような道路には面していない。   

30年余使い込んだ黄色いDaxのザックを背に、飲み屋、食いもの屋○X屋の密集した道をすり抜け通行人を躱しながら「これが入り口?」と驚くような幅80㎝ほどのガラス戸を肩で押し開けてよろよろ2階へ。
80数年一度も寝たことのない、ダブルベッドが部屋の60%余を占めていようという巣についたのであります。 
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(Fホテル204号室3.27)

さて、早速ご近所回り、ということで貰われてきた猫の子のように好奇心満載で、兄姉の後を絶対にはぐれないように、ただし!ガンは休みなく左と右、上と下に飛ばしながら兄姉らの解説、案内にひたすら恐れ入りながら、ハングルや屋台と群れる人の波のなかを今夜の餌に期待しながら泳いでいたのですが、兄は馴染みの山道具店へ愛用のザックを修理に出すとて同行、黄昏の大通りを東西南北、その何れかの方角に向かって突き進む。道中いろいろ説明、案内されたはずだが耳に入れど脳には届かず神経回路の経年変化にはただうな垂れるばかり。
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(鐘路3街の裏通り3.27)

その夕、第一ラウンドの鐘が鳴るのを待ちかねて高鳴る胸を押さえつつ、如何にも物慣れた様子を[その実Y、Sさんを見失って迷い猫にならないよう必死]装って小路の中央ほどまで出張している焼肉テーブルに順番待ちの末やっと席にありついた。
無知な子猫は遭難することもなく好奇心と胃袋を満たすことを約束されたのです。
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(テーブル工房夫妻3.27)

いよいよあのTV番組の体験版の始まり…喉を鳴らして!の時間のはじまり、です。  
所にY、Sさんの韓国の友人らが駆けつけてくれ、オール韓国語の嵐の中、耳はそばだてているものの分るはずもなく、ただ黙々と80余年、日に三回トレーニングを重ねてきた箸[ステンレス製]をひらりひらりと操り、焼けた豚の首肉を挟んでは真っ赤な漬物を巻き付け、何やら葉っぱに包み込んで休みなく口に運ぶ、これだけはみなさんに伍して決して退けをとらず、ただ時々左手の親指を立ててみなさんに見せればヘンな言葉を出すより雄弁に私の感じていることを伝えているであろうと、ひたすら摘む、包む、頬張るの、スリーアクションに励んだのでした。これがこの夜のプロローグ。 
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(芸術家夫妻3.27)

この後更に駆けつけた芸術家夫妻の案内で日本統治時代に生まれた韓国の貧民の食い物が有るという店へ。魚のヱイの醗酵しかかったものに三枚肉を重ねてから何やらを巻いて汁を付け噛みつくという、ある種のゲテものである。
本当に不味いものがその地に根ずくということは無く何れ淘汰されてしまうのが自然。
それが今も尚、其の道を知る人のためにメニューが残され、その微妙な食感、形容し難い味わいは日本が圧迫していたという歴史を語る食の証人か。
確固たる固い肉の中から言う言われぬ汁が歯茎に染み渡る。
その味の変化を嚙み締めながら、何故その様な物を食するようになったのか、も一度日韓の歴史を反芻も半ばにして、今度はカラオケ店に雪崩れ込んだ。 
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(エイの刺身と豚肉を野菜と一緒に食べる3.27)

私はカラオケ大嫌い人間、日本語字幕が出てくれても声が出ない。  
厳かに背筋をピンッと伸ばして歌っていた{君が代}でさえも戦中から戦後のショックで歌えない。 
もう直ぐ天皇陛下の御ために少年航空兵になって特攻に行くんだと言って親に叱られ、また毎日、大本営発表で、
「本日我が陸軍航空隊は○○より侵入せる敵B29と交戦、16機を撃墜せしめたり、わが方の損害は軽微なり」
てなウソばかり聞かされ、それでも右翼少年は懸命に信じながら焼夷爆弾の落下音や油臭い焔に逃げまどっていた、そんなオレをダマしていた歌のイメージ!、ばかりで信用できない、というより憎しみを覚えるくらい!
ただどうしてか日の丸だけはデザイン的に美しく、これにも反感を秘めながらもただ見ているだけの戦中人間。
昔も今もお上の仰ることにはどうも素直になれぬヒネクレジジイ。こんなジジイニダレガシタ?
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(朝の裏通り3.28)
皆さんの歌の数々に「イェーイッ」と何度も叫び、手を打ち終わってヨロヨロと広い通りに出たところで、閉めかかっている屋台のカーちゃんにY兄が残業命令を出した!
締めは焼酎、つまみは豚の皮の唐揚に大きな海老の唐揚げ、もひとつ何か、、忘れた。   屋台って何でこんなに素直になれるんだろ、オレの酒人生の育ての親だから?
人の少なくなった通りに「アニュハセヨ」とカーちゃんに初めての韓国語を残して...
午前2時30分、子猫は虎に変身して初めてのダブルベッドによろめきこんだのです。   
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(前夜の焼肉屋前屋台が片付けられている3.28)

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(路地裏・古い家はそのまま生かしてカフェとかレストランなどに衣替えしている3.28)

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(アサリうどん 3.28) 

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(北岳山の階段登高路3.28)

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(北岳山3.38)

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(北岳山3.28)

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(仁寺洞/インサドンの食堂 [テッマル/縁側] 3.28)

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(アワビ粥 3.29)

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(列車の中 3.29)

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(江華島/カンファド3.29)

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(お刺身屋さん 江華島/カンファド3.29)
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(お刺身やさん 江華島/カンファド3.29)

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(北漢山入り口の牛耳/ウイ 3.30)

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(北漢山入り口の食堂で朝食3.30)

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(北漢山 白雲山荘 3.30)

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(北漢山 白雲台3.30)

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(白雲台頂上から今来たところを見下ろす3.30) 

以上、Sさんから提供いただいたエッセイと写真でした。