良質の音楽を名古屋にと前世紀末から20年ちかく一人でミュージシャンをプロモートしているS嬢。
最近は数年前から活動の拠点としている円頓寺商店街に紛れ込み商店街再興の一翼をになってきた(!)感があるが....
今のスケジュールをこなしたらしばらく休みたいという。

いろんな絡みはあるが私も彼女には色々お世話になった。
ずいぶん昔の話になるが彼女がプロモートした古謝美佐子さんのライブチケットを買っておきながら行けなかったことがある。
後日、彼女は私のために古謝美佐子サイン入りのCDをプレゼントしてくれたのだった。
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しかし私も歳をとり趣味は良質な音楽より猥雑なモノに走り、
そうこうするうちに音もなく忍び寄ってきた老いが覆いかぶさってきて...
感性と体力が衰退し、あたりに加齢臭を撒き散らして鼻をつままれるわ..
仕方なくサエナい引きこもり老人を演じて(!)いる昨今である。
そんなわけでここんとこすっかり彼女にもご無沙汰してしまった。
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久しぶりに彼女を交えて円頓寺商店街の、
S嬢一押しの昭和的居酒屋の佇まい、富士屋にて一献傾けることになった。
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で、冒頭の彼女の話を聞いて衝動買いしたのが翌日のこのライブ。
バイオリン、チェロ、ギターのトリオ。
ま、義理がらみの衝動買い。
ひと眠りしに行くかと舐めてかかったが、この三つのクラシカルな楽器が吹き出すアンプラグドの分厚い音風に眠気がすっかり吹き飛ばされて船を漕ぐどころではなくなってしまった。

バイオリンの気持ちのいい伸びやかさ、チェロの抑制と奔放さ、この二つの楽器を繋ぐギターの老練さが本当に気持ちよい。
音の粒立ちというか三つの楽器の繊細で微妙な音も聞き分けられる。
無数の音の粒子が七色の光彩を煌めかせながら自在に飛び交い、集まっては何かを形作ったとおもえばたちまち分散し、そうやっては流動体のようにうねりながら音楽空間を満たしていく。

バイオリンの江藤有希の作曲作法は、俗にいう何かが降りてくるのではなく、ひたすら絞り出さなくてはならない、だから出来が遅い、などと言って笑いを誘っていた。
なるほど....さしずめ遅筆堂を名乗っていた故井上ひさしみたいなものだなとひとりで納得...

確かに「回転木馬」、「シネマテーク」など、身を置いた状況や体験からモチーフを得てそこから絞り出すのだろう。音楽がその情景を想起させる。   
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休憩中の会場。
円頓寺商店街の西アサヒは老舗の喫茶店というか食堂というかそれにアルコールも....
タマゴサンドが圧巻のようだ....
気取りのないとても落ち着いた素朴で優しい雰囲気の会場である。  
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和やかなうちにライブは終わった。
休憩中にみつくろった土産CDはチェロの音色が好きなので、橋本さんのを買おうとしていたが今日のライブがあまりに良かったから、土壇場でやはりこのメンバーが参加している江藤さんの「hue」を買ってしまった。
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だが既にナマ音源のシャワーを浴びてしまった私の拙い耳にはこのCDからはあの光彩粒子が伝わってこない。
知人に話したら
「そ〜んなの当たり前!」
と一笑に付された。
もちろん機器を通して聞く音楽の貧困さはミュージシャンである彼らの責任ではない。
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してみると、機器を通してさえも、時には俺のチャッチィ魂が揺さぶられることもある構築的なクラシック音楽の奥の深さをあらためて思ってしまう。
ヨシ、今度はナンチャラ協奏曲だと年末のコンサート情報を仕入れる私である。

場違いで陳腐な結論は全て深まりゆく秋のせいにしてしまおう。
私は相変わらずイノセントな瘋癲老人である。

S嬢のフェースブックより
https://www.facebook.com/sakai.hiromi.5/posts/1517423235012106