32年ぶりの冬の上高地へ。
年末、御在所日向小屋での飲み会で、岳友Kと冬の上高地行きで意見一致。
昔登った冬の屏風岩をもう一度見たい!

金曜の夜名古屋を出て、19号線を上り薮原から境峠へのルート。
昔、屏風岩など穂高の岩場を目指した頃の、上高地への定番コースだった。
スキーやバイクツーリングをしていたKにとっても、特別の思いがあるルートのようだ。
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ほぼ完璧に除雪された境峠からの道のり、力を振り絞ってKの軽は走りきり、深夜の沢渡の駐車場に着いた。
駐車場内のトイレの中は暖房が効いており、中でビバークが出来るわと、K。
ヘラブナ釣りのサークルに入っているという彼の軽のワンボックスは、荷台が二段になっていて上の段でくつろげるようになっている。
そこでおでんを温め、一杯やってからシュラフにもぐり朝を迎えた。
外の冷え込みは厳しかったが、最近買ったコムフォートマイナス6度のシュラフでヌクヌクと眠ることが出来た。
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現役時代は、羽毛とは名ばかりの薄っぺらいシュラフを使っていて、冬の剣や穂高でいつも寒さをガマンしながら夜を過ごしていた。
そのシュラフも息子に譲ったが今は行方不明だという。
Kは半シュラフである。
私も半シュラフを借りて使ったことがあるが寒かった。
同じ嵩なら全シュラフだと思った。
仲間から、器用な方がいるよとある山岳会の方を紹介してもらい、作ってもらったのが前述のシュラフだ。
Kの半シュラフもその方が作ったものだそうだ。
四季ほとんどツェルトにいい加減なシュラフで、やせ我慢していたのだが・・・若さゆえ・・・だったなあ・・・
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七時前に起きて準備。
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韓国で買ったサロモンの冬パンツと、美津濃のタイツでオーバズボン無し。
冬の鈴鹿や伊吹で寒いことはなかったが、ここでは寒さが突き刺さってくる。
ミレーの靴もスリーシーズン用で心配の種だが・・
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快晴の空が心配事を吹き飛ばしてはくれるようだ。
駐車場で隣のお兄さんに、タクシーの相乗りを申し出たらこころよくOKしてくれた。
彼が予約しておいてくれたタクシーに同乗させてもらい、釜トンネルまで一投足。
2900円也、一人当1000円。
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白タクなのか民宿か旅館からの送迎なのか・・・
工事用の車両はこの真冬でも上高地に出入りしているようだ。
冬の上高地はアルピニストの聖地だったが・・・
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何といっても安房トンネルの開通がこの辺りの冬のたたずまいを一変したようだ。
安房トンネルの開通に伴って、梓川に沿って山肌をクネクネと辿った県道上高地線は、橋やトンネルで整備されて見違えるようになっている。
冬でも上高地への入山が容易になりスーノーシューでの散策が人気のようだ。
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昔、松本、新島々、沢渡を経て上高地に入り、穂高の北尾根を辿り新穂高に下山して神岡から国鉄で名古屋に帰ったことがある...またその逆も。
今では車で平湯か沢渡まで入れるから、荷物の大きい冬山に交通機関でアプローチする煩わしさは無くなった。
しかし、昔の風情も捨て難いものがあり胸中複雑である。
7時40分歩行開始。
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旧釜トンネルは冬はアイゼンを着けて登らなければならなかった。
夏は途中で狭くなり、対向車とのすり替えが出来ず立ち往生したものだが・・
それも今は昔の話しだ。
あれからマイカー規制などが進められた・・
マイカー規制がない頃は、連休ともなれば駐車場は満杯。
梓川の川原、県道脇の笹薮などに突っ込んでおいたものだ。
駐車場に停めることが出来ず、安房峠を越えて平湯を経て槍見温泉から錫杖岳の岩場に転進したこともある。
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8時10分
一汗かいて釜トンネルの出口に到着。
光の途切れるところは真っ暗。
入山者はヘッドランプくらいの装備はしてほしいとのことで明かりを切っている、とタクシードライバーの話。
どこまでも啓蒙的有難迷惑な配慮だわ。
扇沢〜黒四のトンネルは夜中でも明かりが点いていたが、今はどうなっているのだろう・・
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軽量化とは無縁な岳友の巨大な荷物。
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焼岳の姿にしばし見とれる。
続々とハイカーが上がってくる。
ほとんどスノーシューかワカン。
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8時45分
大正池への入口を回ると待望の穂高連峰。
余りの美しさに歓声が上がる。
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少しズーム。
写真はパソコンに取り入れるとき解像度とフォーカスを調整してある。
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*K撮影
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ちなみに32年前の写真
イデタチが全く変わったね。
デジカメの進化もすごい。
安物のCDコンポの音質をアナログ機器で再生しようとすれば相当な金額をつぎ込まなければならないと、昔誰かが行ってたがカメラも同じだね。
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このカーブミラーのところが初めて穂高と対面するポイントだ。
Kはワシを撮っているのか・・・
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こりゃたまらない・・・

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厳寒の大気に湖水が反応・・
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川原の石の残雪にも降った雪の層がくっきり。
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アートしている。
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美しい霧氷。
厳寒の素晴らしいオブジェ
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大正池に張った薄い氷
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大正池から穂高
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同じく
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も一度
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積雪は1m超、降雪後から大分締まってきている。
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焼岳の姿も魅力的だ
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*K撮影
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大正池旅館を越えると車道を外れて、大正池から田代池をめぐる散策トレイル。
ほとんどの人がスノーシューをつけているのにアンシャンレジームな我々はツボ足・・
まるでウサギと亀・・・
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補正しすぎて不自然にハッキリしてしまった焼岳
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おお、美しい霧氷。
田代池付近
9時40分
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陽が当たりやがて溶けてしまう儚い美しさ。
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やや溶けかかった霧氷の林を歩く。
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*K撮影
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木立越しに霞沢岳の稜線。
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どれだけも行かないうちに霧氷は消えた・・・
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上高地のホテルが近づいてくる。
一度は泊まってみたいと思うが・・
あそこに泊まるようになったら自分の終わりという根拠なき確信・・貧民故・・
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だんだん重荷が肩に食い込んできたなぁ・・
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これぞ縁の下の力持ち、ビジュアルバージョン。
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六百山、霞沢岳方面。稜線の三本槍も見えた。
工事で川の水が濁っている
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何度でも撮ってしまう。
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奥穂高ズーム
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前穂ズーム
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岸辺の風景
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凡百の言葉も尽きた。
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上高地といえばこの風景に尽きる。
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西穂の稜線でヘリがホバリングを繰り返している。
事故でもあったのだろうか・・
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西穂頂上付近のヘリをズーム
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河童橋はもうすぐ。
自然破壊をしているのは誰だろう・・・
興醒めもいいところ・・・
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のしかかる残雪の重さを思う。
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11時10分河童橋到着。
歩き出しから7.5km
オレもバテた・・・
重荷が肩に食い込んで首肩背中が固まってしまった。
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人間は罪深い。
オレもまた・・・
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重機が邪魔!
土日は休めや!
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そそり立つ明神岳5峰、2263峰
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興醒めな真冬の重機ショー
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中年の御婦人たちが・・
スノーシューハイク
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河童橋を渡った旅館の軒下で大休止。
風もなく気温もうなぎ上り。
そしてチョイ悪風オヤジが独りよがりなオーラを撒き散らす・・
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隣のパーティーはキムチとキノコのチゲを作っている・・・
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無風快晴に恵まれ誰しもが歓声を上げて上高地の景観を満喫している。
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皆んなスノーシュー・・
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ウーン、スノーシューに心が傾いて行く〜
12時明神を目指して出発。
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小梨平で見かけたイグルー・・
ヤドカリになりたい・・・
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上高地から上流は人がグッと少なくなるがそれでも行き交う人はある。
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13時15分明神に到着。
昔の記憶では、無雪期は上高地から35分強だったが・・
雪道と重荷で結構バテバテ。
休憩。
明神池に行く気力無し。
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積雪は1m以上
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13時30分、徳本(とくごう)峠分岐
明神から横尾への道はしっかり踏まれているが行き交う人はほとんどいない。
山肌の道、川原の道・・・スノーシューのおかげで思い思いのコースが採られている。
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常念岳が見えて来た。
徳沢はまだ彼方・・
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疲れたなあ・・・
目的地の横尾避難小屋を諦めて徳沢泊まりにしよう・・・
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*K撮影
昔の我らは・・・
早朝沢渡から横尾を越えて、午後3時頃屏風岩の取り付きに到達。
6畳間くらいの巨大な雪洞を掘り、さあ宴会と意気込んだら一ルンゼからの雪崩で雪洞の半分が埋まってしまった。
全員パニックになり、這々の体で下山、横尾にツエルトを張ったのが深夜・・というのが一日の行程だったが・・あの頃の馬力の半分でも欲しい・・
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この平原には梓川の支流にあたる小さな流れが沢山ある。
一カ所、やや緊張する渡渉があった。
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薄い雲がかかった明神岳。
アルペン的な雰囲気のある立派な山容だ。
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雪原を越えれば徳沢は近い。
北尾根末端の屏風の頭が見え始めた。
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15時徳沢到着。
歩き出しから13.6km
こんなところはスノーシューが楽そうだな。
足着きが安定するし・・・
ところで徳沢は無雪期の方が雰囲気がある。
昔牧場だったという緑の草原が広がっていて、ここでキャンプするのは最高の贅沢とすら思えたものだ。
冬は雪原となりここまでの林間の風景とさして変わらないものになってしまう。
当たり前といえば当たり前だが。
ここは以前、通年で避難小屋を営業していたが今年から閉めてしまったようだ。
井上靖の「氷壁」の舞台にもなったところだ。
帝国ホテルの隣の木村小屋といい、徳沢といい、昔を知る者にとっては寂しい限りだ。
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テントサイトを作る。
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テントは4、5張り。
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*K撮影
向こうの緑のテントは岡崎山岳会。
金曜入山で、本日蝶ヶ岳往復してきたそうだ。
快晴無風で槍穂高他絶景を堪能してきたとのこと。
羨ましい・・
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我々のテントは韓国のオクトス。ダンロップなどのメーカー品に比べて半額なので買ったが無雪期仕様でも結構快適だった。
尤も無風の静かな夜だったので、こんな天気ならどんなメーカーのものでも問題はないはずだ。
風雨に叩かれた時にどうなるのか、そこで値打ちが決まる。
2、3人用とのことだが冬は3人はちょいとキツい。
向こうのテントはソロの方。
明け方2時頃には起床していたようだ。
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岡崎山岳会の明かるいお兄さん。
さて、夜の献立は全部Kが準備してきた。
重さを厭わず道具,食材料をほとんどすべて。
献立は先ず牛焼き肉。
ワインビールで二人ともしばし眠ってしまった。
続いてキムチチゲには豚肉、牡蠣、白菜が入り締めはうどんである。
私はKが用意した酒類をここまで担いできたが、ほとんど飲み干した。
こりゃ、こりゃ・・・
帰りは軽いはずだが・・
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一夜明けて。
曇り空、放射冷却はなくせいぜい氷点を少し下回った程度。
風も全く無かったので、予想外、生まれて初めて!暖かい冬山の夜を過ごすことが出来た。
足裏用の貼るカイロも有効だった。
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岡崎山岳会のお嬢さんと一緒に記念撮影。
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天気予報は下り坂で午後雨の予想。
ここから横尾を越えてさらに奥の屏風の下まで往復すれば、昨日のペースから考えて、半日以上かかるかも知れない。
トレースがなければさらに時間がかかる。
ということで、あっさり下山することに決めた。
昨日の上高地の絶景を堪能すれば悔いはない。
屏風岩とのご対面は次のシーズン?生きてるかなあ・・・
ガンジーの言葉を借りれば
「永遠に生き続けるつもりで・・」来年に夢を託そうではないか。
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6時40分下山開始。
昨日とは打って変わって色彩のない陰鬱な山の姿。
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冬でも凍らない林の中の流れを避けて時おり山のヘリにルートが取られている。
急な雪壁から小規模な雪崩が起きやすいところもある。
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岩壁フェチなのでこんな姿に萌えるワシ。
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どこがどこだか分からない写真だが・・
明神の近くだろうか・・
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ただ無心に雪の踏み跡を歩き続ける。
荷物は昨日より確実に軽くなっているのだが、すでに肩首がダメージを受けた状態でつらい・・
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*K撮影
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こんなせせらぎにも春の息吹・・ありきたりの言葉・・
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明神岳の陰鬱な様相
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晴れの日もいいが、こんな厳しそうな風景も見るぶんには悪くない。
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オレに気を使ってゴミや空き缶を一手に引き受けてくれるK!
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Kくん、ゆっくり歩いてくださいな...
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8時、ようやく明神に到着。
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32年ぶりの上高地だがリュックザックはあの時のサレワ。
完全に時代遅れ。
でもすっきりしたフォルムが好きである。
明神の宿にリュックを置いて池と神社をめぐることにしよう。
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写真修正なし
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写真修正あり
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2263峰東壁か?
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長いつららは人が出入りしている証拠だと思ったが今日は閉まっている。
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明神奥宮
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池の真後ろには三角形のピークが見下ろしている。
絶好のパワースポットだ。
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厳しさの中にも春の気配を感じさせる明神池のたたずまい。
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小動物が水を飲みにきたのだろうか。水面の氷の上にも足跡らしきものが・・・
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季節限定の景観
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湧水なのだろうか、厳しい寒さにも氷結することは無いようだ。
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*K撮影
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日本の近代登山の父といわれる英国人ウェストンの案内人を務めた上条嘉門次のレリーフが
彼の名前を採った嘉門次小屋の前にあった。
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一匹の猿が我々を恐れもせず木の芽を食べていた。
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そして枯れ木によじ上りコケを食べだした。
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このせせらぎにに架かる橋を渡れば河童橋はもうすぐだ。
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豊かな流れ、水中の緑の水草は昔のままだ。
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あちこちに樹皮が剥がれている木がある。
食べ物に窮した猿の仕業だろうか・・
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岳沢の上、穂高の稜線には雲がたれ込めている。
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10時15分。
河童橋のたもとで休憩だ。
明神池でゆっくりしたので時間は遅れ気味だがもう気にしなくてもいい。
日曜というのに昨日とは打って変わって静かな上高地。
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でもチラホラ上がってくる人もいる。
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帝国ホテル
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梓川を眺めながらしばし休憩
11時25分
川のほとりではスノーシューの講習会だろうか・・
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12時22分
やっと釜トンネル到着
少し前から雨が本格的に降り出した。
トンネルを抜ければこの旅は終わる。
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釜トンネルを出るとタクシーが2、3台待っていた。
予約できなかったがすぐ乗ることが出来た。
沢渡帰着13時
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帰り道野麦峠スキー場で温泉につかりマッタリ。
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暖炉の前で眠りこけるスキーヤーたち。

後はゆっくり名古屋への道を辿り18時半帰宅。

準備一切を引き受けてくれた岳友Kに感謝!
しかし来年は軽量化しようぜ!
スノーシューも要検討だ。

この歌はあんまり好きじゃないが懐かしい穂高の風景が気に入ったので・・・
穂高よさらば
作詞があの有名な芳野満彦氏とは知らなかった。
芳野氏は徳沢冬季小屋の管理人として越冬されていたこともよく知られている・・